岸谷五朗さん、寺脇康文さんが主宰する演劇ユニット・地球ゴージャスが記念すべき結成25周年の祝祭公演として『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』を上演する。本作は、2009年に10作目として上演された“地球ゴージャス不朽の名作”に、本作が舞台初主演となる新田真剣佑さんをはじめとする新キャスト、そして新たな演出を加えて再演。歴史の大きな渦に巻き込まれた架空の少数民族の生き様を描いた“歴史ファンタジー”が、よりエンターテインメント性を高めて、今蘇る。岸谷さん、寺脇さん、そして主演の新田さんに本作について話を聞いた。
これは今やるべき作品
今の時代に世界に向けて発信
―結成25年で初となる再演。「星の大地に降る涙」を選ばれた理由を教えてください。
岸谷 今まで10周年、15周年、20周年とお祝いの言葉をいただいても「単なる通過点ですから」と言ってきたのですが、25周年は乗っかってみようかと思いまして(笑)。せっかくなら“二十五周年祝祭公演”をやろうと、お客様のリクエストが多かったこの作品を選びました。11年前の作品ですが、本作の「反戦」というテーマ性は、おそらく現代の方がふさわしいなと思っています。楽曲も増えて、よりエンターテインメント性を高めた『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』として蘇ります。我らの愛する大阪の公演では、東京で公演を重ねてからの上演になるので、よりクオリティの高いものができるのではないかと思っています。
―「現代の方がふさわしい」と思われるのは、どういった部分でしょうか?
岸谷 “反戦三部作”として第1作目に「クラウディア(2004年)」、第2作目に「星の大地に降る涙(2009年)」を上演してきました。1868年の明治維新と年代を決めて書いた作品は「星の大地に降る涙」だけです。架空の民族が歴史の波に翻弄されて滅びていく様を通して反戦を訴えられないかなと思ったのがきっかけでした。2年前からミャンマーに住むロヒンギャ族がバングラデシュに避難し、今では90万人以上と難民が増加しています。我々が平和に暮らす現代に、世界ではそんなことがあるんだと考えさせられました。実際に12月にはロヒンギャの難民キャンプを視察してきて、やはりこの作品は今やるべき作品、この時代に世界に向けて発信する作品だと感じました。笑いもあるコメディ作品の中でこのテーマを伝え、何よりも観にきてくださった皆様が「明日も元気に頑張ろう」と思ってもらえる前向きな作品にしたいと思っています。
―新田さんは「ZEROTOPIA(2018年)」に続く2度目の参加。本作では主演を務められますが、オファー時の心境は?
新田 「ZEROTOPIA」に出演している時に今回のお話をいただきました。しかも主演のシャチ役でオファーをいただき、夢のようなお話で信じられませんでした。「役者になりたい」と思い始めた12歳くらいの時にアメリカで偶然「星の大地に降る涙」の初演を映像で観たことがあり、「何だこの舞台は!」と衝撃を受けたことを覚えています。それまでドラマ・映画ばかりで舞台をちゃんと観たことがなかったので、そのライブ感がとても印象的でした。そんな思い入れのある作品に出演できるのは、すごい縁だなと感じています。
―本作では岸谷さん、寺脇さん以外はキャストを一新。岸谷さん自ら脚本も書き直されたそうですね。
岸谷 マッケン(新田)をはじめ、素晴らしいキャストが集まりました。「前回と違うアプローチをしてみよう」とか「これをもっと膨らませたらこうなるな」など、再演だからこそできることに気づかされました。膨らませすぎて長老役は森公美子さんになっちゃいましたが(笑)。芝居や身体能力など舞台における総合力をみて、本作のシャチを演じ切れるのはマッケンしかいないなと思いました。脚本では、彼のシャチを想像して書きましたし、楽曲も彼に合わせて増やしました。その分、寺脇さんのギャグをカットしたり色々調整して(笑)、上演時間は変わらず約3時間を予定しています。美術に関しては、根本的には前回と同じです。北海道の大地の下、ある洞窟に住む民族という設定は変わっていません。
寺脇 五朗ちゃんと僕は11年前と同じ役を演じます。前回は前回の良さがあり、今回は今回の良さを出せるように、また違うセッションが稽古場でできているなという印象です。人が変われば接し方・内容も変わってくるので前回の空気感とはまた違います。11年経っていますので「アクションの質が落ちた」と言われないように(笑)、僕も今やれるベストを尽くしたいと思っています。