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映画『おいしい家族』より松本穂香、ふくだももこ監督にインタビュー

「えん」で第40回すばる文学賞佳作を受賞するなど、映像と文学の両フィールドでの活躍が期待される新鋭作家・ふくだももこさんが2015年に監督を務めた『父の結婚』。それをもとに再構築した長編初監督作品『おいしい家族』が9月20日に公開される。亡き妻の服を着て生活する父(板尾創路)とその家族を通して、“好きなものを好きといえる世界”をおいしく、たのしく、カラフルに描きだす。主人公(娘)・橙花には、ドラマ「この世界の片隅に」の主役すず役で注目を集めた松本穂香さん。ふくだ監督と松本さんに本作への想い、見どころについて語ってもらった。

ドラマの起伏のために悪い人を出すのではなく
違う軸を作りたいと思った

―短編『父の結婚』の長編化。今回は舞台を離島に移してエピソードやキャラクターを追加し、家族における絆とそこへ向き合う主人公の心境がより深く描かれています。
監督 短編は家族の話でしたが、長編ではプロデューサーからの提案で町の話にすることになりました。登場人物も増えるにあたって、この家族に対して嫌悪感を抱いている近所のおじさんが居てもいいのでは?という案もあったのですが、私の中では「なんか違うな」と思って。ちょうどその時に穂香ちゃんも出演していた連続テレビ小説「ひよっこ」を観ていたのですが、岡田惠和さん脚本のこの世界は、誰も嫌な人が出てこない。皆泣いて、笑って、頑張ってるみたいな…すごい美しい世界だなって。ドラマの起伏のために悪い人を出すのではなく、違う軸を作りたいと思ったんです。ダリアと瀧という高校生2人の軸を取り入れて、そのことによって家族の話からちょっと飛躍できました。小説ではキャラクターそれぞれの物語を詳しく書いているので、ぜひ読んで欲しいです。

―キャラクターそれぞれが個性的ですが、皆に共通して「純粋さ」がありますよね。
監督 以前に穂香ちゃんも「反発して見える橙花も、純粋だからこそそうするしかない」って言っていて「そうやな」と納得しました。橙花は純粋ゆえにツンケンしちゃうんですよね。
松本 思ったままに行動する橙花はある意味素直。でも、実家に帰ったらお父さんがお母さんの服を着ていたり、居候がいたり、その状況が受け入れられずツンケンしちゃうんですよね。多分最初から、そのツンツンした態度が続かないのも分かっているし、皆が仲良くしているのを見てその輪に入れないのがだんだん寂しくなっちゃって。皆で歌うシーンも一緒に歌いたいとは思っているけど、今更入っていくこともできない。大好きなお母さんの存在も大きいし、お父さんのことも好きだからこそ許せない部分もあったんだと思います。

撮影中にあまり話さなかったのは
女優として信頼していたから

―松本さんは本作が長編映画初主演となり、最初は不安な気持ちも大きかったそうですが。
松本 オファーをいただいた時は「経験も少ない私が主演で大丈夫かな」と不安でしたが、リハーサルをした時に「こんな感じかな」と役を掴むことができたので安心しました。
監督 皆忙しい中集まってくれたのもあってリハーサルは短い時間でしかできなくて、「よし、こんな感じでいこう!オッケーオッケー!」っていう感じで(笑)。
松本 皆「初めまして」だから、なんか変な空気でした(笑)。
監督 「好きに演じてください」って特に演出なしで食卓のシーンをリハーサルしたので、皆探り探りで演技をしていて。特に和生(浜野謙太)とダリア(モトーラ世理奈)とか、それぞれの関係性を作って欲しいという想いでのリハーサルでした。その時にもう穂香ちゃんは“橙花”を掴んでくれていたし、私が思う橙花ともぴったり合っていたので、撮影中も穂香ちゃんに対して演出をすることはあんまりなかったですね。
松本 撮影中は会話もあんまりしなかったですよね!?ほかの皆さんとは話していました?
監督 いや、演出面ではそんなにかな。瀧くん(三河悠冴)をいじったりはしていたけど(笑)。終わった後に飲みに行くこともあったよ。
松本 皆で飲みに行かれてたんですね!
監督 私は宿で飲みたかったんだけど、ハマケンさん(浜野謙太)に「撮影で使うスナック行こう!」って誘われたから(笑)。
松本 へぇ!スナックってあそこのお店ですか?
監督 そうそう!あそこ!パジャマで行ってしまったのもあってすぐ帰った(笑)。穂香ちゃんは宿が別の場所だったから、撮影後にご飯とかはなかなか行けなかったよね。

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―撮影中はあまり会話をしなかったとのことですが、今のお2人はとても打ち解けているように見えます。
監督 沖縄国際映画祭からかな?
松本 映画祭やトークショーの時にいろいろお話しして、そこからですね。話す内容は映画と関係のない話ばかりですが(笑)。撮影中にあまり話さなかったのはあえてというか、それくらいの距離感がいいんだろうなという暗黙の了解でした。
監督 撮影後にお互いにそう思っていたという確認ができたのは良かったです。あまり話さなかったのは女優として信頼していたからというのがちゃんと伝わっていて嬉しかったですね。