「風が抜ける街」神戸に感じた“ポテンシャル”
松:市内にある文化施設や団体が自分たちの活動をきっちりされているのは私もよく知っていますが、確かにみんなが一堂に会することは中々ないし、顔は知ってるけど、一緒に何かすることはないのかもなっていう気はしますね。
でも『AiRK』ができて、いろんな人がだんだん繋がり始めて、自然と丸くなっていってるように感じています。
森:普通に考えて、ダンスと現代美術の人が「何か一緒にやろうぜ!」みたいなことって今はそこまでないというか。もちろん横断的に動いているところもありますが、神戸ではそういった動きがそこまで起こっていないような気がします。
それは別に悪いことだと思わないですけど、僕が今やってることが踊り、演劇、現代美術と節操なく動いていることもあり、ダンスはダンスだけっていうことじゃなく、カルチャーというか、アートとひとくくりにしてもいいんですけど、表現という軸から全体をどうアクティブにしていくかという部分に興味があるんです。
森:地元のために何かしたいみたいな思いは、正直に言うと全然なくて。僕個人がアーティストとして、東京ではないどこか面白い場所で表現を模索していきたいってなったときに、シンプルに「神戸のポテンシャル」に興味を持ったタイミングがあったんですよ。
同時に、ポテンシャルはあるけれども、ここでやるってなったときにその文化的な素養だったり、何かしらの要素が足りないとも正直思った。そういうボトムの部分をどういうふうに動かしたら、どういうムーブメントが生まれて、そこに自分の体が入れば、どういう動き方ができるだろう、というような、すごく利己的なモチベーションでやっています。
それを大事にしないで、使命感とか、何か責任とかでやっちゃうと、自分がアーティストとして駄目になることがわかってるので、そういった思いでやっています。
松:私は“故郷のために”という理由ではなく、いろいろ見た中で神戸が、自分のやりたいことができる街だというポテンシャルを感じてもらえたのが、逆に嬉しかったですね。
森:「卵が先か鶏が先か」みたいな話で、自分が神戸出身だからそう感じたのかはわかりませんが。僕は神戸を『風が抜ける街』だと思っています。何かが強く定着する場所ではないかもしれないけど、常に流動的に動いている場所というか。
これは感覚的な話ではなく、地理的に考えても何かが溜まる場所ではないんです。東西の交通・物流の要で、歴史的にも平清盛が中国に対しての港を開いたりだとか、明治に神戸港を開いたりだとか。
いろんなものが流れて、入ってきては出ていく場所であり、そのおおらかさや空気感が心地よくて、僕は好きって感じです。
★後編「『AiRK』がアーティストと神戸の街にもたらすものとは」はこちらから
【profile】
(左)松下麻理
神戸観光局で神戸フィルムオフィスと広報・メディアリレーションを担当。プライベートでは『AiRK』管理人として、滞在するアーティストとの共同生活を送っている。
(右)森山未來
俳優・ダンサー。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。