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映画『風の電話』よりモトーラ世理奈、諏訪敦彦監督にインタビュー

―あまり感情を出さないハルが泣き叫ぶシーンは、やはり心に響くものがありました。難しいシーンだったのでは?
監督 感情的になるシーンは「広島」「大槌町」「風の電話」と3回ありましたね。

モトーラ 最初の広島のシーンは、ちゃんとできるか不安な気持ちもあって、事前に「どういう風に言おうかな」と考えていたんですけど、考えれば考えるほど分からなくなってきて、撮影をスタートするまでに時間がかかりました。

監督 こちらも初めて見るわけですから、どういう動きをするのかスタッフもドキドキで。ハルが急に走った時にはカメラマンがちょっと焦っていましたね(笑)。撮り終えて「ここまでできるんだな」と感心しました。

―ハルの旅のゴールとなる「風の電話」のシーンは10分を超える長回し、ハルの全ての想いが映し出される重要な場面。何を言うのかはモトーラさんに任されていたそうですね。
モトーラ 1テイク目は途中で集中力がプチっと切れてしまって、嘘をやっているようで何か気持ち悪くて。2回目では、ハルとして電話ボックスの中に入って、「ここまで1人で来たんだよ」っていろいろな想いをちゃんと伝えられました。決めていた言葉ではなく、その時に出てくる言葉が言えて、カットがかかるまでハルとしてできたなという感じでした。

監督 前日までどんよりしていたのに、その日はものすごい晴れて、木をうわっと揺らす突風が吹いて、雲が動いて、光が差して、という異様な天候が奇跡的な舞台を演出してくれました。映画を撮っているとたまにそういうことがあるんですけど、あれは何かに触れてしまったなという不思議な感覚がありました。この作品は「風の電話」のシーンが上手く撮れるかどうかに全てがかかっていたので、今思えば、そんな大事なシーンもお任せにしたのは、すごい責任を負わせてしまったなと申し訳ない気持ちです。

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―2019年の振り返りと、2020年に向けての意気込みを教えてください。
監督 2019年は久しぶりに日本で撮影した映画『風の電話』を仕上げることができて。映画を撮り始めて20年以上経って、もう一回ゼロからやり直しというか、また一から新しく映画をつくりたいなという気持ちでいます。2020年は、還暦を迎える年。とりあえず今年はちょっと休みたいかな…(笑)。

モトーラ 2019年は21歳になって、20年って早かったなって思いました(笑)。次の20年後は40歳なので、そこに向けてやりたいことを見つけながら頑張っていきたいです。名前の“世理奈”には世界を知るという意味もあるので、いろんなところに行って知らない世界を見にいきたいですね。

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映画『風の電話』

©2020映画「風の電話」製作委員会

©2020映画「風の電話」製作委員会

天国に繋がる「風の電話」へ、今日もまた人々が訪れる。
東日本大震災で家族を失った高校生のハル(モトーラ世理奈)は、広島に住む祖母の家に身を寄せているが、気持ちは岩手県大槌町に向いていた。ある日、故郷を目指し、意を決して電車に飛び乗るハル。ヒッチハイクをして様々な人と出会い、別れを繰り返しながらハルは大槌町にたどり着く。そこで“風の電話”という亡くなった人に想いを伝える電話の存在を知り、導かれるように旅の終着点に向かっていく―。

公開日 2020年1月24日(金)公開
監督 諏訪敦彦
脚本 狗飼恭子、諏訪敦彦
出演 モトーラ世理奈、西島秀俊、西田敏行(特別出演)、三浦友和 ほか
劇場(兵庫) 神戸国際松竹、MOVIXあまがさき、イオンシネマ加古川
公式サイト http://www.kazenodenwa.com/

 

モトーラ世理奈 Serena Motola
1998年10月9日生まれ、東京都出身。2015年に雑誌『装苑』でモデルデビュー、2018年に映画『少女邂逅』で映画デビュー。2018年、NHKドラマ『透明なゆりかご』での演技で視聴者に大きな印象を残し、2019年には映画『おいしい家族』や映画・シンドラ・Hulu『ブラック校則』に出演。2020年は『猫、かえる』1月18日公開、『恋恋豆花』2月22日公開と、今後さらなる活躍が期待される注目の新人女優。

諏訪敦彦 Nobuhiro Suwa
1960年生まれ、広島県出身。1999年に『M/OTHER』で第52回カンヌ映画祭国際批評家連盟賞、第14回高崎映画祭最優秀作品賞、第54回毎日映画コンクール脚本賞を受賞。2019年、フランスの伝説的俳優ジャン=ピエール・レオーを主演に迎えた「ラインは今夜死ぬ」を発表した。東京藝術大学大学院映像研究科教授。

 

撮影:秀村安奈
取材・文:木下あづさ