“空気”のように浸透し、存在し続けることで、アーティストと地域の人々を繋げていく
森:まもなく2年目を迎えますが、麻理さん的にはこれから先「『AiRK』がこうなっていきたい」みたいなイメージはありますか?
松:この場所はプライベートな空間だし、全てをオープンにすることはできないんですけど、より多くの人が『AiRK』をもっと身近に感じられるような機会を増やしたいという思いがあります。街の人たちとアーティストが道で出会った時に、「やあ!」と言い合えるような関係性が築けたらいいな。
森:そうですね、神戸ではいろんな文化施設がアーティストを受け入れたりとか、企画を立ち上げたりしてるんですけど、そうすることで北野だけでなく、神戸の様々な場所・アーティスト・住んでる人たちが繋がっていくと思うし、『AiRK』がそれらを繋ぎ合わせるハブみたいになっていけると良いですよね。
それに、『AiRK』をきっかけにアーティストがどんどん神戸に根を下ろしていけば、それに伴ってテクニカルなクルーたちも神戸に集まってくるので、単純にいろんなことを、もっといろんな形でやれる素地がどんどん生まれていくと思うんです。これは、運営としてではなく、一人のアーティストとしても楽しみです。
松:確かに。そのために、これから私達は神戸の人たちとどう関わっていくべきだと思いますか?私はまず「『AiRK』があることで神戸が変わるんだ」いうことをたくさんの方に腑に落ちてほしいかな。
地元の人たちが見る神戸の姿ではない姿を、アーティストの目線から表現してもらうことで、「私達の住んでる街はこんな見え方もするのか」と感じてもらって、新しい魅力や楽しみ方を見つけて欲しいと思っています。
森:今年の3月に、協賛してくれている企業や提携している文化施設、さらに一般の方をお招きして、僕らの活動の報告会を開いたじゃないですか。そこで初めて僕らが何をやっているのかを理解してくれた人たちも多かったですよね。そうやって、少しずつわかっていってもらえればいいなと思っています。
なぜなら『AiRK』ができたことで、短期的に何かが劇的に変化することはまずないからです。だけど、ここが存在することによって、着実に何かが浸透していくことは、間違いなく「そう」だと言えます。
アーティスト・イン・レジデンスは略して「AIR(エアー)」と呼ぶんですけど、その名の通り、風のように中々つかみにくいものかもしれませんが、少しずつ浸透していくことによって、神戸の文化そのものが醸成されていくのだと思います。
松:以前未來さんが、目に見えないけれども、存在することで文化的な土壌を豊かにすることからAIRを「モグラ」に例えていましたが、私達はそういう存在なんだとすごく腑に落ちたし、長く続けていくことが大事だと感じました。
森:一過性の花火を打ち上げることは、その瞬間はきれいだけど、持続性には繋がりません。一見地味でも持続性のある活動こそが、本当の文化醸成に繋がるものだと僕は思っています。
★前編「アーティストと神戸を繋げる『AiRK(アーク)』」はこちらから
【profile】
(左)松下麻理
神戸観光局で神戸フィルムオフィスと広報・メディアリレーションを担当。プライベートでは『AiRK』管理人として、滞在するアーティストとの共同生活を送っている。
(右)森山未來
俳優・ダンサー。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。