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映画『光』井浦 新 × 瑛太にインタビュー

愛情も深いところまでいくと
相手が求めているものが
暴力であっても与えてあげようとする

―本作では“暴力”が一つのテーマになっていますが、暴力についてどう捉えながら演じていらっしゃいましたか?
瑛太 ネット上での言葉の暴力も嫌いです。愛を失ったり、そういったものが欠落したときに暴力が生まれると思うんですよね。人間同士のそういった暴力というのは、いくら芝居でやっていてもいいものじゃない、気が滅入りそうになります。でも、どこかで正当防衛の暴力みたいなものに小さい頃から憧れを持っているような気がして。ヒーローやアニメも最後には暴力を使って倒しますからね(笑)。普段の生活にも暴力はずっとついてくるもので、もしかしたら急に僕が誰かを殴ってしまうかもしれないし、言葉の暴力として何か言おうと思えば言える。そしたら取り返しのつかないことになりますよね。そういった感情を理性で抑えながら生活をしている。その暴力が描かれているということはやっぱり“生きる”ということが描かれているんじゃないかなと思いますね。

井浦 演じる時に感じるというよりは、演じ終わってから感じることだったかなと思いますね。例えば、津波。大自然も見方によっては暴力にもみえる。大自然の暴力と信之が輔に与えていた暴力、そして輔のお父さんが輔にしていた暴力は、横並びというか同じようなものなんじゃないかなと。自分の中にはないけど、嫌いだから暴力を振るうというわけではなくて、愛おしすぎてその愛情が言葉にできず暴力を以って愛おしさや生を実感することも一つの形としてあるんだなと信之を通して感じました。演じている時は、人間の生命力というものが凌駕してしまっていたので、あくまで生命力の中にある暴力という、生命力の一つに過ぎなくて。信之が輔に向けた言葉や行動は、暴力といったら暴力だけど、それ以上に愛情があって、愛情も深いところまでいくと相手が求めているものを与えてあげようとする。それが暴力であっても愛情へとなっていくんですよね。25年ぶりに輔に会い、暴力を以って会話している信之はすごく生き生きしていたんじゃないかなと、演じていて実感しました。

光1

―人間の闇を描いている本作で「光」というタイトル、お2人がこの作品の中で見出だした“光”とは?
井浦 それぞれの捉え方があるんでしょうけど、やっぱり僕は人間の生命力がこの映画の中の光として当たっていたところじゃないかなと思いますね。

瑛太 光がないと生活はできないですよね。夜になっても月が出て照らしているから生活ができている。なので、生きているということが光なんじゃないかなって思います。たとえどんな状況でも、その人たちにどんな背景があっても、呼吸をして生きている、それが光かなって。

嫌だなって思うシーンがあったら
声を出してもいい。それくらい
観る人に生きている実感を与える

―劇中の音楽を手掛けるのはテクノミュージックの巨匠と呼ばれるジェフ・ミルズさん。お2人が演じる信之、輔のむき出しの本能と同調するような迫力あるテクノミュージックがとても斬新でした。
瑛太 大森立嗣監督は次のステージというか、ある意味新しい世界にいっちゃったんだなと思いましたね。あとは、音が鳴るということは音が止むわけで、パッと止まるのか、フェードアウトしていくのか、この音をどう止めるんだろう、そのタイミングはいつなんだろうって思いながら聞いていました。どのカットで、どの状況で観ている側の心理を変えてくれるんだろうってところをすごく考えながら観ていました。

井浦 映画がはじまった瞬間から驚きました。初めて観た時は、びっくりして声が出ちゃいましたね(笑)。これから映画をご覧になる方にもそれくらいのテンションで観ていただけたら嬉しいです。嫌だなって思うシーンがあったら声を出してもいいと思いますし、それくらい観る人に生きている実感を与える作品になっていると思います。この映画のために作ってもらった音楽なので、音楽からでも感じることもあるでしょうし、この映画を観てどう感じるのか、聞いてみたいですね。先日、ローマ国際映画祭に大森監督と参加してきて、観に来られていた方は若い人もいたんですけどほとんどが初老のご夫婦だったんです。外国の方々がどんなリアクションをするのか全く想像がつかなかったんですけど、人間の心深いところに届く映画だから必ず何かは届くであろうと後ろから見守っていました。何に一番ドキドキしたかって、ジェフ・ミルズの音楽がオープニングで鳴った瞬間にこの人たちはどんな反応をするんだろうってことです。誰一人席を立たずにずっと観てくださって、上映が終わった後に入り口のところで立っていたらいろんな言葉をかけてくださいました。「Strong(ストロング)」「Beautiful(ビューティフル)」という言葉が多かったですかね。海外の方にもちゃんと届くんだなと安心しましたし、“美しい”という感想は新鮮でした。その美しさは演出的な美しさではなく、きっと人間の心が映っているからこそ美しいって感じるんだろうなと思いましたね。