Vol.4：フェスティバルディレクター・平田オリザ氏 インタビュー「豊岡×演劇」
平田オリザ氏が語る「豊岡演劇祭」
今回は、演劇祭のフェスティバルディレクターを務める平田オリザさんへインタビュー。平田さんは劇作家・演出家であり、また2021年に開校した「芸術文化観光専門職大学」の学長も務めています。
学長就任にあたり、家族で豊岡への移住を決めた平田さん。今回は「豊岡」のまちと「演劇」について、話を伺いました。
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これほど多様な観光地と、食文化を持ち合わせた演劇祭は見たことがない
ー実際に住んでみて感じたまちの良さと、平田さんが思う「豊岡演劇祭」の魅力を教えてください
豊岡はまず自然が豊かで、食べ物がおいしい。また一番有名な観光地でいうと「城崎温泉」だと思いますが、そのほか「神鍋高原」や出石のお蕎麦など、多様性にあふれています。
多様性という面でいうと、演劇祭も同じ。私は世界中の演劇祭に招待されていろんな所へ足を運びましたが、これほど多様な観光地と食文化を持ち合わせた演劇祭は見たことがない。これが最大の強みだと思います。
毎年順調に観客動員数を増やしていますし、アートを引き金に新しい観光客を開拓していくことも演劇祭の狙いでしたので、今のところ、うまくいっていると思います。
「今年、豊岡いつ行く？」豊岡演劇祭は、都心の演劇界でも話題に
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青年団『銀河鉄道の夜』 2024年 こまばアゴラ劇場
ー他の演劇祭と違うポイントはどこにあるでしょうか？
一度にたくさんの演目を見ることができること、また新しいアーティストとの出会いの場になっている点かなと。見本市のような性格も果たしていると思います。
徐々に都心の演劇界でも「今年、豊岡いつ行く？」といった話が出るようになってきていますが、その理由はアーティストたち自身が”楽しさ”を感じているというのが大きいのではないでしょうか。
それほど演劇に関心がないという人でも、ストリートダンスや大道芸、ナイトマーケットなどがたくさんあり、ここまでまち全体で楽しめるフェスティバルは、国内を見ても珍しいと思います。
大学開校、演劇祭を通じて「楽しいまち」を作っていくことが大事
読売テレビプロデュース『ムーンライト・セレナーデを聴きながら』
ー大学開校や演劇祭などをきっかけに県内外から豊岡へ多くの人が訪れていますが、それによるまちの変化は感じられますか？
平田さん：若い人やUターン者が増え、まちの雰囲気も変わってきたと思います。やっぱり「楽しいまち」を作っていくことが大事だと思います。
また演劇祭開始当初、コロナ禍で思うように「国際化」が進んでいなかったという点がありましたが、今年はフリンジプログラムの公募で海外からの申込も8件ぐらいあり、実際にそのうち何件かには参加してもらうことになっています。
この3年ほどで、フリンジプログラムの申込数に関しては国内最大級になっています。「豊岡演劇祭、楽しいよ！」というクチコミが広がっていくのが一番大事なので、今後は海外でも少しずつ広がっていくのではないかなと思っています。
「演劇祭じゃないときに、もう一度来たくなる演劇祭」を目指して
ーどんどん成長を続けてきた演劇祭、今後の展望を教えてください。
平田さん：私たちは当初から「演劇祭じゃないときに、もう一度来たくなる演劇祭」を目指してきました。アンケートでも「来年も来たい」という回答が7、8割を占めていますし、新たな人を連れて来てくれるリピーターの方も増えています。いい循環になっているかなと。
今後はそれに加えて「ゆっくり楽しめる演劇祭」になってほしい。例えば長期休みの1週間豊岡に来てもらって、平日の昼間はテレワークをしながら、週末は家族で色々な観光地を巡ったり、時には夫婦だけでじっくり芝居を見たり…。そういった楽しみ方ができるようになったらいいなと思います。
【プロフィール】
平田オリザ
1962年 東京生まれの劇作家・演出家・青年団主宰。芸術文化観光専門職大学学長、江原河畔劇場 芸術総監督であり、豊岡演劇祭のフェスティバルディレクターも務める。