ー声優のイメージやキャリアのない俳優さんを起用されていますが、映画の世界観に見事に合っていますよね。どのようにこだわって選出されたのですか?
オーディションの時には声優さんを含めてたくさんの人から選びました。役者さんを選ぶときは、声をあてるだけではなく「作品を背負って立ってほしい」ということも考えています。技術だけではなく存在感や佇まいなど、ビジュアルという意味ではなく「この人がすずめなんだ、なるほど」と観客が納得するような“キャラクターとの一体感”が欲しいと思っています。見た目が外に出る仕事ではないですが、声はその人を表す鏡なので。
(主演を演じたすずめ役の原菜乃華さんについて)オーディションの際、1700人の応募者の声を聴きましたが、自分の子どもの声を聴き分けるように、自分のキャラクターの声は不思議なことに2秒、3秒で聴き分けられるんですよね。においのようなものでわかります。
ー「戸を締める」というネガティブなことも明るく肯定的に描かれていて、この映画で勇気づけられる人もたくさんいると思います。観客の皆さんにはどのように受けとめてほしいですか?
そこは作り手が唯一コントロールできないことだと思います。「こう観てほしい」という風には言えませんが“嘘がないメッセージ”を込めたつもりです。自分が辛い状況にあるとき、数年後の自分を想像して「今は辛いけど来年は笑っている」と自分を鼓舞したりしますよね。この映画でやりたかったのはそういうことで、自分が自分を励ますことをフィクションなりの伝え方でお客さんにまっすぐ届ける。そのためにすべての要素を設計して作った映画なので、嘘がない言葉として、すずめの言葉が観客に響けばいいなと願っています。
新海誠
1973年生まれ、長野県出身。2002年、個人で制作した短編作品「ほしのこえ」で商業デビュー。2004年公開の初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』で第59回毎日映画コンクール「アニメーション映画賞」を、2007年公開の『秒速5センチメートル』でアジアパシフィック映画賞「最優秀アニメ賞」を、2011年に公開された『星を追う子ども』で第8回中国国際動漫節「金猴賞」優秀賞を受賞。2013年公開の『言の葉の庭』では、ドイツのシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭にて長編アニメーション部門のグランプリに輝いた。2016年公開の『君の名は。』は歴史的な大ヒットとなり、第40回日本アカデミー賞でアニメーション作品では初となる「優秀監督賞」、「最優秀脚本賞」を受賞。さらに国内外で数々の映画賞を受賞した。2019年公開の『天気の子』は、第92回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表に選出。
映画『すずめの戸締まり』
九州の静かな町で暮らす17 歳の少女・鈴芽(すずめ)は、「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。災いが訪れてしまう扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として日本中を旅しているのだという草太だが、二人の前に現れた謎の猫・ダイジンが「すずめすき」「おまえはじゃま」としゃべり出した次の瞬間、草太はなんと、小さな椅子に姿を変えられてしまうー!逃げるダイジンを追いかけるすずめたちの前で、次々に開き始める扉。不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、日本列島を巻き込んでいくすずめの“戸締まり”の旅。その先ですずめを待っていたのは、忘れられてしまったある真実だった。
公開日 | 2022年11月11日(金) 全国東宝系公開 |
原作・脚本・監督 | 新海誠 |
声の出演 | 原菜乃華 松村北斗 深津絵里 染谷将太 伊藤沙莉 花瀬琴音 花澤香菜 松本白鸚 |
キャラクターデザイン | 田中将賀 |
作画監督 | 土屋堅一 |
美術監督 | 丹治匠 |
音楽 | RADWIMPS 陣内一真 |
公式サイト | https://suzume-tojimari-movie.jp/ |
公式Twitter | https://twitter.com/suzume_tojimari |
公式インスタグラム | https://www.instagram.com/suzumenotojimari_official/ |
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
取材・文・写真:秀村安奈