一子相伝のデミグラス♪神戸モダニズム建築『御影公会堂食堂』で味わうオムハヤシ 神戸市
国道2号線と石屋川の交わる場所に建つ『御影公会堂』(神戸市東灘区)は、90年以上もの間、文化施設として区民に親しまれている”御影のシンボル”。どっしりと威厳を放つこの建物で、開館以来営業を続ける名物食堂『御影公会堂食堂』に行ってきました。
昭和8年に建てられた同施設は港町神戸らしく“船”がモチーフ。丸窓や丸みを帯びた壁面などの独創的なデザインと西洋建築を取り入れたこの建物は、昭和36年から26年間結婚式場だった歴史もあります。
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2016年から1年をかけて行われた改修工事でも可能な限りその様相を残し、国の有形文化財として登録されました。
広いエントランスには天井を支えるアーチ形の梁、それを支える重厚な丸柱。素敵な内・外観は、映画やドラマにも度々使われています。
地下に降りると昭和にタイムトリップしたかのようなレトロな食堂入口が!現在食堂は、3代目の店主鈴木眞紀子さんが切り盛りしています。
フロアも可能な限り開業当時の面影を残しているのだそう。
地下とは思えないほど明るいのは、建物との間に隙間を作り、光を取り込む設計になっているからなのだとか。
食堂の初代店主は鈴木さんの祖父・鈴木貞さん。大阪のホテルでバンケットの責任者だったこともあり、この食堂を任されたそう。改修時、偶然発見された開業当時のメニューには本格的な洋食メニューやワインなどが並び、当時日本を代表する邸宅街であった御影のセレブたちがハイカラな洋食を楽しむ場所だったことが伺えます。
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食堂の要であるデミグラスソースは当時のレシピを引き継いでいます。「書いたものが残っているわけではありません。父には見て覚えろと言われていました」と2代目であるお父様、鈴木利裕さんを思い出しながら笑顔で語る鈴木さん。
牛骨や鶏がらを焼いて水炊きにし、野菜や肉を入れて煮込んでは漉し、という工程を繰り返し、じっくり2週間煮込んだもの。今回はそんなデミグラスソースを目当てに「オムハヤシ」をお願いしました。
オムハヤシは「店自慢のデミグラスソースをもっと味わってもらいたい」と、洋食ブームで人気に火が付いたオムライスにデミグラスソースをかけたことから始まったメニューです。
卵は1人2.5個分を使ってふっくらと♪玉ねぎやトマトピューレなどで味を整えたデミグラスソースは、酸味の効いたしっかりとした味わいで、ケチャップライスと卵をまろやかに包みます。
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「戦時下で爆撃が近くに落ち、1階から上の内部は焼けましたが、建物の外枠は残ったんです。震災の時も建物は無事だった事に、運を感じる」と鈴木さんは言います。「私の目の黒いうちは、他にないこの歴史とレシピを守りたい。地道に100周年まで努めて参りたいと思っています」
初代店主が命がけで食堂を守る姿をみて2代目が、震災後に食堂を立て直す2代目の姿をみて鈴木さんが、と3世代に渡って食堂を続けてきたプライドのようなものを感じました。