茂木大輔サムネ2

『生で聴く のだめカンタービレの音楽会』茂木大輔さんにインタビュー

繊細であり、重たい
ロマンに満ちたブラームスの音楽

―今年は、ブラームスの交響曲2曲を、2日間に渡り演奏されるんですよね。
そうなんです。「のだめ~」の漫画の中でなんですけど、登場人物の千秋が演奏会デビュー時に指揮をした曲がブラームスの交響曲 第1番で。テレビドラマのクライマックスでも披露されている作品ですね。この曲はすごく人気が高く、「ブラ1」という愛称で親しまれています。「のだめの音楽会でも取り上げてほしい」というリクエストが高い曲を、今年は初日に演奏します。そして、漫画の終わりのほうで、千秋の指揮の師匠であるミルヒーがのだめを連れてロンドンに行くシーンがあるんですが、その演奏会で取り上げているのがブラームスの交響曲第4番。こちらを2日目に披露します。

―まさに原作の世界観とリンクしそうですね。
原作を知っている方・知らない方、オーケストラを好きな方、初めて聴く方にも楽しんで頂けると思います。ちなみに、僕はついつい先に言っちゃうんですが(笑)アンコールもブラームスです!

―では、ブラームスの曲の特徴はどのようなところでしょう?
ブラームスは19世紀後半の作曲家で、ドイツでは最も活躍した作曲家です。ドイツ北部の寒い地域出身だからか、音楽全体が憂鬱な雰囲気を持っています。音楽の世界でも憂鬱=メランコリーと表現されますが、ある種の女性的な要素を持っている。それは時に“優しさ”だったり、時に“弱さ”だったり、打たれ強くない何か…。一言でいうと「繊細さ」というか。一方で、音には重厚感があるんです。よくアマチュアでも練習をしていて、弦に少し圧力をかけて弾くと「それはブラームスの音じゃないか」なんて表現をしたり、逆にブラームスらしさを出したい「ここぞ」という時は弦楽器が弓に力を入れて引くという手法もあります。その憂鬱で物悲しい部分と重たい部分が組み合わさって、何ともロマンティックな、まるで憧れに満ちてウットリするような音楽が出来上がる。それがブラームスの特徴ですね。

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―そんなブラームスの音楽に合わせて、原作「のだめカンタービレ」のスライドが上映されるんですね。
そうなんです。イラストの投影とともに、解説もさせて頂きます。ブラームスの人生や交響曲を語る上で欠かせない、“クララ”という美しい人物の肖像画も見てもらおうと思っています。

―また、ソリストも両日で異なりますね。
初日は、今クラシック音楽会で話題を集めているユニット「OBSESSION」の2人が出演してくれます。クラシックの大ピアニストである三舩優子さんとジャズの大ドラマーである堀越彰さんの2人によるユニットなんですが、偶然耳にしたとき、あまりにも精密且つクリエイティブな演奏をされる2人だなとビックリしました。作曲家がオーケストラの音楽を書くみたいに、一つひとつの音まで緻密にプログラムされていて、それを2人でものすごい数の練習を重ねて作品にするという。リフォームというか、作品が生まれ変わるような、全く新しい音楽を聴いているようなイメージですね。これは音楽家としての好奇心と音楽というものへの誠実さの表れだと僕は思っています。聴衆がいかなるフェイクも見破ってしまう中、「緻密に作れば作っただけのことがある」とこの2人は絶対に信じているんじゃないでしょうか。本公演がオーケストラとの初共演ということなので、僕自身も楽しみにしています。

―そして2日目のソリストは、まさに主人公の「のだめ」を思わせるような長富彩さんですが。
僕は彼女を「プリンセス豊臣」ならぬ、“プリンセス長富”と呼んでいます(笑)。少し天然でほんわかした方ですが、ピアノを弾かせると本当にすごい。長富さんの演奏というのは、すごくクリアに作品を理解できる演奏なんです。つまり感覚的に聴けるんだけど、それがより作品の奥底までがよく見えるというか。だから「演奏が素晴らしいな」と思うと同時に、「この作品はなんて素晴らしいんだ」と思ってしまう。これは演奏の最も理想的な姿です。この曲が面白いなって思ってもらえることが、指揮者としては一番嬉しいこと。演奏を通して、「ベートーヴェンってすごいな」「ブラームスってなんて良い作曲家なんだ」と思ってもらえると嬉しいですね。長富さんはその両方を成し遂げている方ですが、それを理屈っぽくではなくて、ほぼ感覚的に組み立てる人なんです。そこが「のだめ」そのものですよね。