中谷美紀1

『黒蜥蜴(くろとかげ)』中谷美紀さんにインタビュー

私も美しいものが大好きなので
どこか共感してしまうんですよね

―「美」に執着する女盗賊・黒蜥蜴という人物を、中谷さんはどのように捉えられていますか?
悲しくもあり幸せな人。自分には心がないと思っていて、血も涙もない人間だったはずの黒蜥蜴が明智小五郎という唯一のライバルに出会うことで、人間らしい恋心や愛を知る。そういう意味では、そんな相手に出会えて幸せだなと思います。一方で、それまで美に執着するあまりそのほかのことには関心がなく、人間らしい生活をしてこなかったという意味では悲しいなと思います。私も美しいものが大好きなので、どこか共感してしまうんですよね。もちろん人を殺めたいとは思いませんが(笑)、美しいものに触れるために生きているところは同じです。

―東京で行われた製作会見では、本番でも使用される衣裳を身にまとい、ステージパフォーマンスを披露されていましたが実際に衣裳を着てみていかがでしたか?
不思議なもので、人は仮面を着けると何でもできるような気持ちになったりしますよね。それと一緒で、私服のまま表現するとどこか自我が働いてしまうのですが、衣装を着るとその気になるものですね。衣裳というものが物を言わずして多くを語ってくれるなと思います。

―本作は、何度も舞台化されてきた名作として知られていますが、ルヴォーさんが手掛ける『黒蜥蜴』の見所、魅力とは?
デヴィッド・ルヴォー版「黒蜥蜴」というのがどういったものになるのか、探り探り作っていきたいと思っています。お芝居のト書は多少無視して、多少どころかかなり無視してルヴォーさんなりの新しい世界観でお見せすることになると思います。映画的な手法も用いたいともおっしゃっていましたので、身体表現などを含め新しい黒蜥蜴をご覧いただけると思います。ルヴォーさんは、主役だけが目立つ作品ではなく、全体のバランスをとても大切にしてくださる演出家です。アンサンブルキャストの皆さんの動きにも、とても時間をかけて丁寧に向き合っていらっしゃって、そういったお姿から学ぶことも多いです。アンサンブルキャストの方々の動きからも黒蜥蜴のキャラクターを見出だせるのではないかと期待しています。

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撮影:舞山秀一

「言葉の魔術師」であり「ペテン師」
こうして人を騙してきたんだなと(笑)

―ルヴォーさんから言われたことで、印象的だった言葉は?
日本語で「人生は短い」と。所々キーポイントとなる言葉は日本語でおっしゃるんですよね。そういうところがとてもチャーミングで、こうして人を騙してきたんだなと思いました(笑)。「人生は短い」その10秒後くらいに「でも、深い。だから、長い」とおっしゃって。ワークショップのときや休憩時間などに、何となく近寄っていらしてポツリとおっしゃるんです。製作会見の合間にもボソっと同じようなことを言われましたね。あと「それも人生」という言葉もよくおっしゃっていて、私たちはどちらかというとネガティブな意味で使いますが、ルヴォーさんはとてもポジティブな意味でお使いになるので面白いなと思いながら聞いています。「よほど大変なことがあったのですね」とお返ししたら「まぁね」とおっしゃりました。まぁ、おっしゃっていることがどこまで本当かは分かりませんけどね。如何せん「言葉の魔術師」であり「ペテン師」でいらっしゃいますので(笑)。

―黒蜥蜴との共通点として「美しいものが大好き」ということを挙げていらっしゃいましたが、中谷さんが美しくあるために気をつけていることを教えてください。
CMにも携わらせていただいておりますが、「TV&MOVIE」という化粧品を使うことです。北海道でとれた馬プラセンタやストロングマヌカハニーが使われていて、抗酸化作用もありますし、お肌に優しく馴染んでくれるので愛用しています。食に関してはお砂糖を摂らないようにしています。外食など仕方がないときもありますが、自分で料理するときは砂糖ではなくココナッツシュガーを使うことが多いです。あとはタンパク質を摂るようにしていますね。また、美しいものを観ることも好きで美術館やギャラリーによく行きます。一番好きな美術家は多摩美術大学の名誉教授でいらっしゃるリ・ウーファン先生。韓国の方なのですが人生のほとんどを日本で過ごされていて、パリのヴェルサイユ宮殿やニューヨークのグッゲンハイム美術館などでも個展をなさっています。リ・ウーファン先生の作品は余白が多いのであまりうるさくないといいますか、静けさをもたらしてくれて心が穏やかになるんですね。都会にいると情報が多いものですから疲れますよね…そういったものをすべてクリアにしたいときにリ・ウーファン先生の絵に向き合うと、瞑想をしているかのような感覚に陥ります。